
結論から書くと、HYROXのウォールボールは全部門100回(2026/27シーズン公式ルールブック)で、ボールは女子4kg・男子6kg、ターゲットは女子2.70m・男子3.00mです。時間ペナルティはなく、基準を満たさないレップがカウントされないだけですが、その「数えられない1回」が積み重なって最後の数分を失うのがこの種目です。完走75〜90分帯の中央値は男子Openで約6分、女子Openで約5分20秒(当サイト集計・非公式)で、男子Openでは8種目の中で最も長くかかる種目でした。
この記事で分かることは次の4つです。
- 公式ルールブックの基準(回数・重量・高さ)と、ノーレップになる動き
- 完走タイム帯別のウォールボールの平均タイム(公開データを当サイトで集計)
- 100回を何回に分けるか、セット分割の目安
- 本番で崩れないフォームのコツと、ジムでできる練習メニュー
公式ルールブックの基準(2026/27シングル)
公式ルールブック(2026/27シングル・日本語版)§8.8「ウォールボール」の内容です(2026年10月時点)。
| 部門 | 回数 | ボールの重さ | ターゲットの高さ |
|---|---|---|---|
| WOMEN(女子Open) | 100回 | 4kg(ホワイト) | 2.70m |
| WOMEN PRO | 100回 | 6kg(グレー) | 2.70m |
| MEN(男子Open) | 100回 | 6kg(グレー) | 3.00m |
| MEN PRO | 100回 | 9kg(ブラック) | 3.00m |
ネット上には「女子Openは75回」とする情報も残っていますが、2026/27シーズンのルールブックでは女子Openも100回です。古い記事を参考に練習している人は回数を確認し直してください。他の種目の重量はHYROXの8種目と重量表にまとめています。
動作の基準は次のとおりです。
- 自分の部門の正しい重さのボールを選ぶのはレーサーの責任です。ボールは色で見分けます。
- 股関節と膝を伸ばした直立姿勢から始める。床からボールを拾ってそのまま投げるのは認められません。
- フルスクワットから両手で投げ、指定ターゲットに当てる。ここまでで1回です。女子は女子用、男子は男子用ターゲットのストライクゾーンに当てます。
- 当たったボールはキャッチして次に入るか、床に落としてから次に入ります。いずれも直立姿勢に戻ってからスクワットを始めます。バウンドしたボールをキャッチしてそのまま続けるのは不可です。
- スクワットの最下部では股関節が膝より下(太ももが床と平行より下)まで下がっている必要があります。ジャッジの判断で深さ確認用のボックスが使われることがありますが、レーサーからは要求できず、座って休むためのものではありません。
- ターゲットに着いた後はシューズを脱いでもよいことになっています。脱いだシューズはリグの下に置き、100回を終えたらフィニッシャーステージへ持って行きます。
- デジタルスクリーンでレップ数やノーレップが表示されることがありますが、判定の基準は物理ターゲットとジャッジの確認です。100回完了でスクリーンが緑になり「GO」が表示されます。
ペナルティは「警告なし・有効レップかノーレップか」だけで、ノーレップに時間加算はありません。ただし100回を終えずに離れると失格(DQ)、ウォールボールステーションでパウダーチョークを使うと2分です。全項目はHYROXペナルティ一覧で確認できます。シューズを脱げるようになった経緯は2025/26シーズンのルール変更点で解説しています。
ノーレップになりやすい5つの動き
ルールブックの基準を、実際に崩れやすい場面に置き換えると次の5つです。
| よくある動き | なぜノーレップか | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 疲れてスクワットが浅くなる | 股関節が膝より下に届いていない | 最初の10回で「この深さ」を体に覚えさせ、後半も同じ深さで切り返す |
| ボールがターゲットの下に当たる | ストライクゾーンに届いていない | 腕で投げず、立ち上がる勢いでボールを押し上げる。疲れたら狙いを少し上にする |
| 床からボールを拾って即投げる | 直立姿勢から始めていない | セット間にボールを置いたら、一度立ち上がって胸に構えてから再開 |
| 跳ね返ったボールをワンバウンドで拾って続ける | バウンド後のキャッチは不可 | 取り損ねたら無理に拾わず、落としてから立って構え直す |
| 女子が男子用(3m)のターゲットを狙う/重さを取り違える | 指定ターゲット・指定重量ではない | 会場でまず自分の色のボールと高さを確認してからリグに立つ |
ノーレップはタイムに加算されませんが、1回あたり3〜4秒かかる動作をもう一度やることになります。10回ノーレップを出せば30秒以上のロスです。
平均タイムはどのくらい?(当サイト集計)
以下は、Zenodoで公開されている研究用データセット「HYROX capacity-profile panel v1.0」(Mauricio Figueroa、CC BY 4.0、公開リザルトサイトhyresult.com由来)を当サイトが集計したものです。HYROXの公式統計ではありません。シングルのOpen/Proのうち、ラン8区間・種目8区間・Roxzone14区間がすべて揃い、合計が公式フィニッシュタイムと±3秒以内で一致するレースを対象にしました(Roxzoneの集計記事と同じ条件)。
女子Openは、2023年以前のレースではウォールボールの中央値が約4分と、2024年以降(約6分)より2分近く短く、当時は回数の基準が現在と違っていた可能性があるため、2024〜2026年のレースだけを使っています。男子Openのデータは2021〜2024年のレースです。
男子Open(6kg・3m)
| 完走タイム帯 | N(レース) | ウォールボール中央値 | 四分位(25〜75%) | 総合タイムに占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 60分未満 | 79 | 3:46 | 3:33〜4:04 | 6.5% |
| 60〜75分 | 587 | 4:29 | 4:00〜5:01 | 6.6% |
| 75〜90分 | 886 | 5:59 | 5:19〜6:54 | 7.2% |
| 90〜105分 | 570 | 7:01 | 6:05〜8:02 | 7.4% |
105分以上の男子Openはデータが少ない(N=41)ため載せていません。
女子Open(4kg・2.7m、2024年以降)
| 完走タイム帯 | N(レース) | ウォールボール中央値 | 四分位(25〜75%) | 総合タイムに占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| 60〜75分 | 3,084 | 4:16 | 3:51〜4:42 | 6.0% |
| 75〜90分 | 9,179 | 5:21 | 4:46〜6:02 | 6.5% |
| 90〜105分 | 6,454 | 6:42 | 5:55〜7:39 | 7.0% |
| 105〜120分 | 2,876 | 8:19 | 7:06〜9:46 | 7.5% |
| 120分以上 | 1,830 | 10:38 | 8:51〜13:03 | 8.0% |
参考までに、完走75〜105分帯の中央値を他の種目と並べると、男子Openではウォールボール(6:22)が8種目で最長で、バーピーブロードジャンプ(5:10)やサンドバッグランジ(5:02)より1分以上長くかかっていました。女子Openではウォールボール(5:51)はバーピーブロードジャンプ(5:59)に次ぐ長さです。Proは男子7:22・女子6:24(同じ75〜105分帯)でした。
表から読み取れるのは、完走タイムが遅い層ほど、総合タイムに占めるウォールボールの割合が大きくなることです。遅い層ほど、1回ごとの時間よりもセット間の休みが長くなっていると考えられます。注意点として、このデータセットは研究用に組まれたコホート(男子は複数回出場者中心など)の寄せ集めで、全出場者の無作為抽出ではありません。目標タイム全体の組み立ては平均タイムと種目別ペース配分を参考にしてください。
100回を何回に分けるか(セット分割の目安)
ここからは当サイトの提案です。上の中央値を100で割ると、完走75〜90分帯で**1回あたり約3.2秒(女子Open)〜3.6秒(男子Open)**です。実際に投げている時間は1回2〜3秒なので、差はセット間の休みと考えられます。100回を通しで投げ切れる人は少数なので、最初から分け方を決めておき、休む時間を短く固定するのが現実的です。
| 目標(ウォールボール) | 分け方の例 | セット間の休み |
|---|---|---|
| 4分台 | 25-25-20-15-15 | 5秒以内(ボールは置かずに抱えたまま呼吸) |
| 5〜6分 | 20-20-15-15-10-10-10 | 5〜10秒 |
| 7分以上 | 10回×10セット | 10秒以内(ボールを置いてよいが、置いたら立って構えてから再開) |
分け方のポイントは次の3つです。
- 前半を大きく、後半を小さく:疲れてから大きなセットを組むと途中で止まり、休みが延びます。
- セットは「できる回数の7〜8割」で切る:限界まで投げるとフォームが崩れ、ノーレップが増えます。
- 休みは秒数で決める:「呼吸が戻ったら」と決めると休みは必ず延びます。心の中で5つ数えたら再開、のように決めておきます。
ダブルスでは2人で100回を分けられます。交代の比率の決め方はダブルスの分担戦略で解説しています。
本番で崩れないフォームのコツ
- ボールは胸の高さで、肘を下に向けて抱える:肘が外に開くと肩が先に疲れます。
- 脚で投げる:しゃがんだ状態から立ち上がる勢いでボールを押し上げ、腕は方向を決めるだけにします。腕で投げるほど肩と前腕が先に売り切れます。
- キャッチと同時にしゃがみ始める:ボールを受けたら、その重さを使ってスクワットに入ると1回のリズムが途切れません。直立姿勢を一瞬はさんでからしゃがむのが基準なので、立ち切ってから下りる意識は残します。
- ターゲットを見続ける:顔が下がると胸も下がり、ボールがターゲットに届かなくなります。
- 呼吸は「投げて吐く」:投げるタイミングで吐き、キャッチで吸うリズムを決めておくと、後半も呼吸が乱れにくくなります。
- シューズを脱ぐかは練習で決める:裸足(靴下)の方がしゃがみやすい人もいますが、脱ぎ履きと持ち運びの手間もタイムに含まれます。練習で一度試してから決めましょう。
膝や腰に不安がある場合は、HYROXの怪我予防もあわせて確認してください。
ジムでできる練習メニュー(当サイトの提案)
ウォールボールは、ボールとターゲットになる高い壁があれば練習できる数少ない種目です。ジムの壁に高さの目印がない場合は、**3.00m(男子)/2.70m(女子)**を測って確認しておくと、本番で「思ったより高い」と感じずに済みます。
- 分割のリハーサル:本番の分け方(例:20-20-15-15-10-10-10)で100回を通し、セット間の休みをストップウォッチで測ります。週1回、タイムと休みの合計を記録します。
- EMOM(毎分の頭に回数をこなす):1分ごとに15回×7分など。余った時間が休みになるので、「決めた回数を決めた時間で投げる」感覚が身につきます。
- 疲れた脚での練習:本番ではサンドバッグランジ100mと1kmランの直後にウォールボールが来ます。ランジ(または自重ランジ)→1kmラン→ウォールボール50回の順で通し、脚が疲れていてもスクワットの深さを保てるか確認します。
- 深さのチェック:スマートフォンで横から撮影し、最下部で股関節が膝より下に入っているかを確認します。自分では深いつもりでも、疲れると浅くなりがちです。
12週間の流れへの組み込み方は12週間トレーニングメニュー、本番と同じ器具がそろう練習場所はHYROXの練習拠点を探す方法で紹介しています。
女子Openは4kg、男子OpenとWOMEN PROは6kgが本番の重さです(2026/27ルールブック)。まずは自分の部門の重さで回数練習を。
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回数・重量・ターゲットの高さはシーズンごとにルールブックで更新されます。出場する大会年度の公式ルールブックで必ず確認してください。当ページの情報は2026年10月時点のものです。


